• 最高の一着に“正解“はあるのか?

    ──3年前、私たちはそんな問いから、ある実験を始めました。名付けて “N(β)“。


    30以上のブランドTシャツを集め、国際基準の検査機関で数値比較を実施。どれが「究極の一着」なのかを探ろうとしたのです。けれど、そこで突きつけられたのは、ひとつの真実でした。


    それは、数値だけでは“正解“にはたどり着けないということ。


    たとえば着心地、柔らかさ、しっとり感。感性の領域にあるそれらは、数値では正しく評価できない。むしろ、スコアが高い服でも、肌で感じたときにどこか違和感が残る──そんなケースすらあったのです。


    そこで私たちは、次の実験 “O(β)” で、視点を変えることにしました。目を向けたのは「工程」。


    数字を追うのではなく、ものづくりの出発点から見直す。言い換えれば、“こうありたい“という願いを、職人の技術でかたちにするという挑戦でした。

  • その想いに応えてくれたのが、和歌山の職人たちです。大量生産を選ばず、一枚ずつとことん向き合うことを選び続けてきた人たち。糸の選定にまで遡って考え、機械にまで手を入れて、理想の肌触りをかたちにしてくれる。“できない“を前提にしない。そんな職人です。


    今回、私たちが一着に込めた理想像は、こうです。


    「袖を通した瞬間の感動」「しっとりと吸い付くような肌触り」「何度洗ってもへたらない耐久性」「見た目から伝わる上質感」

  • その感覚的な価値を実現するために、選ばれた素材は、世界の綿の中で、わずか0.002%しか生産されない超希少綿「スビンゴールド」。繊維に多くの油分を含むこの綿は、しっとりとした滑らかさをもたらします。そして糸は、3本を撚って1本にする“三子撚り“という技術で構成。断面がより円く、目の詰まった美しい編み地が、そこから生まれます。

    仕上げの工程では、職人が汲み取った私たちの意図や希望を、既製のマシンでは表現できない繊細なニュアンスにまで落とし込み、独自に調整を加えた編み機で、唯一無二の生地へと仕立ててくれました。

  • こうして完成した O(β) は、ある意味で “答えに一番近づいた“一着かもしれません。けれど、私たちにとってこれはまだ β版。試作と改良を重ね、細部までこだわり抜いたこの一着は、「数値化できない着心地」を突き詰めた、ひとつの“到達点“であり、同時に、これからも更新されていく「プロセスの途中」でもあります。それでも、私たちは確信しています。


    これが、新しい品質基準になることを。